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インスタの“いいね!”や食べログの評価、主観的評価が溢れる時代だからこそ、どんな人が作っているのか知りたい。インタビューを通じて料理人の想いをご紹介。

料理人の履歴書
公開日:

Vol.3 山本 理(後編)/健美和食

山本 理(やまもと おさむ)/(健美和食)

ひとしずく:日本のハイクラスな文化の中心地である六本木の裏通りにひっそりと佇む、隠れ家的な小料理屋。「こだわり」「粋」「健康」をコンセプトに、ホッとする日本の家庭料理を安心安全の無添加で提供。生酛造り(きもとづくり)という、伝統的な日本酒を取り扱う希少性も話題。

元損保の営業マンが脱サラしてオープンした創作料理屋が、六本木のお客様の心を掴んで大成功。しかし父親の闘病と介護をきっかけに学んだ「食と健康」、そして訪れた運命の出会いとは。

 

前編はこちら

 

 

江戸時代の日本人は、こんなに旨い酒を飲んでいた

山本:私にとって人生を左右する運命の出会いだったのが、生酛造り(きもとづくり)と呼ばれる、江戸時代の頃から受け継がれてきた製法で作られた日本酒です。実は日本酒の作り方は、戦後の頃から大きく変わりました。速醸もと(そくじょうもと)と呼ばれる、純度の高い乳酸を投入して短時間で造る方法が普及したからです。現在作られている日本酒のほとんどが、短時間でできるこの方法がとられています。

一方の生酛造りは、空中にある天然の乳酸菌を利用して日本酒造りをする方法で、非常に手間ひまがかかります。作り手は大変ですが、自然の力を利用した健全醗酵で作る日本酒は、それぞれ味に幅と個性があるのです。私はすっかり生もとの深い味わいに魅せられてしまいましてね。どうぞ、飲んでみてください。

 

編集部:美味しい! すごく飲みやすいですね。甘くて、まろやかで。

山本:そうでしょう。これが、江戸時代の日本人が飲んでいたお酒です。贅沢ですよね。幕末の志士たちが、こんな旨い酒を飲んでいたなんて。江戸時代に既に、日本酒の飲み方は完成されていたのです。乳酸菌とか発酵が科学的に分かっていなくても、職人の勘と、腕と、努力で完成していたのです。そう思うと、このどっしりとした甘みのある味わいに私はロマンすら感じます。

 

父を看取って、今後の自分の人生を考えたときに「この酒に合う和食料理屋を出したい」と思いました。それが今のこの店です。健全醗酵で丹精込めて作られた生もと造りの日本酒にはやはり、化学調味料を使わず、手間ひまかけて素材の良さを生かした料理がよく合います。人工的な素材を使うと、不思議なことに味が生酛造りの日本酒に合わないのです。私の店では野菜も無農薬の有機野菜を取り寄せていますし、先ほどお出ししたぬか漬けの糠も、酒蔵から有機無農薬のものを分けていただいています。ですから洗い流さなくても、そのまま食べることができるのです。

 

先ほどとは違う銘柄の生もと造りのお酒があるのですが、こちらも是非飲んで下さい。

 

集部:え? 日本酒に、甘酒を入れるのですか?

山本:これがミソなのです。生酛造りの日本酒は、良くも悪くも個性が強いところがあります。この銘柄は丁寧に造られている良い酒ですが、料理に合わせようと思うと少し辛みが強いのです。そこで、甘酒を少し入れると、辛みが中和されて旨味が引き立ちます。もちろんこの甘酒も、うちの手づくりです。

 

編集部本当ですね。美味しくて、何杯でもいけてしまいます。

山本:日本酒は“食中酒”だと考えています。料理と一緒に食べて飲んで、口中調味のようにお互いの味を引き立たせる。それが日本酒を楽しむ醍醐味だと思うのです。しかし、一般的に日本酒はアルコール度数が15~16度ほどあります。これでは、アルコールの味が前面に出すぎてしまって、天然の出汁の味をかき消してしまうのです。

 

私は日本酒と、食材の味のバランスを取ろうと試行錯誤しました。そこで、鹿児島焼酎のときに学んだ“先割り”を日本酒に応用することを思いついたのです。つまり、15度程度あるアルコール度数が10~12度になる程度に水で割るのです。こうすると絶妙なまろやかさになり、生酛造りの日本酒と料理のポテンシャルを最大限に引き出せることがわかりました。実は先ほど、最初に飲んでいただいた生もと造りの日本酒も先割りしたものです。

 

編集部:え! 水で割ってあったのですか? 全く気がつきませんでした。日本酒は結構のんでいますが、素晴らしい味わいでした。

味のバランスを追及した店主が選んだオリーブオイル

山本:ありがとうございます。そしてもう一つの運命の出会いが、オリーブオイルです。私はもともと創作料理の出身なので、和食にも新しい出会いを探してしまう悪い癖がありましてね(笑)生酛造りの日本酒によく合って、出汁の味わいも殺さず、新しい旨味を作り出せる何かを求めていたときでした。ある、エキストラバージンオリーブオイルに出会いました。

 

イタリア料理の修業をしていましたから、オリーブオイルの味は分かっていたつもりでした。でも、このオリーブオイルは私がそれまで出会った物とはまるで違って、最高にうちの料理に合ったのです。化学薬品に頼らない食を追及している私が、100%のエキストラバージンオリーブオイルに出会うのは必然だったのかもしれません。

 

先程はぬか漬けにかけましたが、ぬか漬けだけでなく、煮物、お茶漬けにも合うんですよ。どうぞ、召し上がってください。

 

集部:本当だ。絶妙にマッチしますね!私たちはオリーブオイルの取材をよくしているので、質の高いエキストラヴァージンオイルが和食に合うことは知っていました。でも和食の料理屋さんで、こんなに香り高いオリーブオイルをたっぷりかけているのを見たのは初めてです

山本:良いオリーブオイルは値段が張るので、安いオリーブオイルを使いたくなりますけどね。でも、やっぱり生酛造りの日本酒に合うオリーブオイルを使いたいのです。

 

飲食業は、合理主義に走ってはいけないと思っています。最近の日本人は、食べることがただの消費になっている傾向がありますよね。「安くて、お腹を満たせればそれでいい」といった様子です。しかし、食べることは未来の健康に直結しています。私たち飲食業は、食べ物を売っているのではありません。健康を売っているのです。だから私は、これからも“天然”にこだわって、お客様に未来の健康をお届けしたいと思っています。

 

編集部ありがとうございました。

 

 

「これ、良かったらお土産に」と、ぬか漬けを持たせてくださった山本さん。

料理への心配りと同じように、編集部にも細やかな気遣いをしてくださる温かい人柄が魅力的でした。撮影用に使用したオリーブオイルも一緒にいただいたので、夕飯で“有機ぬか漬けのオリーブオイルがけ”を出してみました。子どもにはまだ難しいかと思いましたが、わが家の就学前の子どもたちにも「美味しい」と大好評。本物の味は、何歳でも分かるようです。

 

 

【オリーブオイル情報】

今回取材にご協力いただいた「ひとしずく」さんが取り扱っているオリーブオイルをご紹介していただきました。

 

(右)ディエボレ コラティーナ(左)ディエボレ ノッチェラーラ

 

 

 

【店舗紹介】

日本酒生もと造り専門店 健美和食 ひとしずく

 

住所:東京都港区六本木3-3-25

TEL:03-6277-6868

営業時間 :月~金18:00~23:00(Last order 22:00)

土18:00~22:00(Last order 21:00)

定休日:日、祝日

最寄駅:六本木、六本木一丁目

URL:https://hitoshizuku-kimoto.jimdo.com/

 

 

 

【取材協力】

株式会社アミューズ

感動オリーブオイル

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