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祖父は板前だった。
今で言うとミシュランクラスの料亭の花板(料理長のこと)で、業界では名の通った腕だったらしい。十何代も続く江戸っ子で、「粋」が着物を着て歩いていると評判の男だったそうだ。
そうなるとまあよくある話で「飲む・打つ・買う」の三拍子揃ってしまい、大企業の重役並みの収入だったくせに、この世からグッドバイした後に残ったものは、水っぽくて誰も着られないような角袖のコートと角切りの下駄(どちらも想像できないと思うけど)、それに柳刃、蛸引きから菜切り、小出刃、大出刃と見事に揃った包丁一式だけだった。
その包丁たちは今、私の手元にある。
もう軽く50年は経つが、刃先はいまだに恐ろしいほどの切れ味と美しさを保っている。樫の柄はあくまでも軽く硬く、水牛の角の角口は今でもしっかりと刃を支えている。
私は左利き。和包丁は片刃なので、右利きは右利き用、左利きは左利き用の包丁が必要だ。私はこの右利きじじいの形見の包丁のポテンシャルを、おそらく1/10程度しか発揮させてやれない。それでもめげずに今日も包丁をふるうのだ。じじいもおそらく高い所から「なんだ、なんだ、左利きじゃあしょうがねえなぁ。その割にゃあ器用にやってるじゃねぇか」と言っているだろう。
今は5月。江戸っ子の好物、初鰹を使った品を考えよう。鰹の旬は春と秋で、春が「初(春)鰹」、秋が「戻り鰹」といい、「初鰹」は「戻り鰹」よりも脂肪が少ないのが特徴だ。じゃあおいしくないのかと言うと決してそうではなく、さっぱりとした中にも身の旨味を感じるので、「戻り鰹」よりもおいしいという人もいる。
さっぱりしているだけに、コクのあるオリーブオイルとの相性も抜群だ。オイルはもちろん搾り立ての、フルーティなのにキレのあるエクストラバージン・オリーブオイルを使い、長ネギや生姜、ニンニクなどを入れたタレを作り、これも旬の新玉ネギと一緒にたっぷりいただこう。
ここでは初鰹のサク(塊のこと)をじじいの包丁で切っているが、切る自信がなければもちろん、刺身を入手すればよい。
【材料】
【作り方】
1. 新玉ネギを薄くスライスし、水にさっとくぐらせて絞り、皿に盛っておく。
2. 長ネギ、生姜、ニンニクをみじん切りにしてボウルに入れ、オリーブオイル、塩を加えてよく混ぜ、ネギ塩オイルだれの完成。
3. 鰹を刺身に切り(刺身を使う場合は省略)、1の玉ネギの上に並べる。
4. 3の上から2のネギ塩オイルだれをかけ、青紫蘇の千切りを散らしてできあがり。
柔らかく甘みのある新玉ネギと初鰹を一緒に口に入れると、ネギ塩オイルだれのキレと合わさって、まさにこの季節の極上の一品。さっぱりとしていながらオイルの華やかな香りとコク、すらずにみじん切りにして存在感を出した生姜とニンニクのピリッとした辛みが、羊羹のようにねっとりとした上質の赤身と合わさってたまらない。
じじいならきっと「何だと?!鰹に油かけるのかよ、そりゃまたべらぼうじゃあねぇか」と言いそうだ。
でも、おいしければいいじゃん、ねぇじいさん。
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ヘルシーで様々な効能を持ったオイルへの注目が高まっています。中でもオリーブオイルの消費量は大きく伸び、同時に、ココナッツオイル、アルガンオイル、亜麻仁油、MCTオイルなど、なじみのなかった様々なオイルも注目されるようになってきました。
しかし、私たち日本人の日常的な食卓では、その活躍の幅はまだまだ狭く、真新しいノートのように真っ白な状態ではないでしょうか。 Olivenoteでは、読者の皆様の意見やオリーブノートアンバサダーへの参加を募りながら、カラダに美味しいオイルを中心に、楽しく健康的な食卓を築いて行ける情報を綴ってゆきます。