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クリスマスシーズン到来…というわけで今回は「キリストとオリーブ」の関係を紐解く!コロナのせいでいろいろなイベントがなくなり、あっという間に1年が過ぎてしまった、という気がします。もったいないことです…。
ですが今年もそろそろクリスマスシーズンは巡ってくる、ということでせめて季節感のある話題で気持ちを上げていこうかなと。
クリスマスとオリーブ、と考えると自然に思い出すのが、聖書での「キリストとオリーブ」の関係性。前にも当欄では旧約聖書に出てきた「ノアの方舟」とオリーブについて書きました。今回は新約聖書から紐解いてみましょう。
まずは一番に思い浮かぶのが、イスラエルはエルサレムにある「オリーブ山」。山というより、エルサレム旧市街より数十メートル高いくらいの、小高い丘のような場所です。聖書によれば、キリストはここで弟子たちに説教を行い、また捕らえられる直前には最後の祈りをここで捧げたといいます。ここは古くからオリーブ畑になっていたのでこの名前がついたそう。
ちなみにWikipediaによれば「オリーブ”さん“」ではなく「オリーブ”やま”」と呼ぶようですね。現地の写真を見ると、確かに「やま」という形容が合っています。
そして今回の核心、「ナルドの香油」。ここは、なぜか昔から聖書をたびたび絵本がわりに読んでいた自分には強烈に印象に残るシーンなのでした。一部引用してみましょう。
イエスがベタニヤで、らい病人シモンの家にいて、食卓についておられたとき、ひとりの女が、非常に高価で純粋なナルドの香油が入れてある石膏のつぼを持ってきて、それをこわし、香油をイエスの頭に注ぎかけた。
新約聖書:マルコによる福音書14章より引用
初めて読んだとき、この状況は何だと思いましたね。突然、女性がキリストの頭に油を注ぐ。いったいどういう事情なのでしょう。
「ナルド」とは、Nardostachys jatamansi というヒマラヤ原産の薬草で、芳香が強く、古くから香水や医学、儀式などに使われてきたそうです。エッセンシャルオイル「スパイクナード」の原料であり、鎮静作用に優れているとして、現在も使われています。
そして聖書時代の油といえばオリーブオイル。そもそも「キリスト」とは名前ではなく「救世主」という意味の称号なのですが、元の語義は「油で聖別(聖なるものとして分けて扱う)された者」の意で、その油がまさにオリーブオイル。もともと聖書とオリーブは密接な繋がりを持っているのです。
そしてこの香油、葬送の際に死者の体に塗ったりもするという、ものすごく特別な油なようです。なのでキリストも「この人は良い行い、つまり私の弔いの用意をしてくれた」と。ん?それだとこの女性がキリストを葬ろうとしていたということ…?いえいえ。そこを理解するには、もう少しこの香油について調べてみましょう。
このナルドの香油、「非常に高価な」とありますが、いったいどれくらい高価なものなのでしょう。
ある人々が憤って互に言った、『なんのために香油をこんなにむだにするのか。この香油を三百デナリ以上にでも売って、貧しい人たちに施すことができたのに』
新約聖書:マルコによる福音書14章より引用
デナリという単位が出てきました。これはローマ帝国の銀貨で、イスラエルで使用されていた「一日分の賃金相当」の貨幣だそうです。300デナリ以上、ということはほぼ1年分の賃金…女性が持ってこれるくらいのサイズのつぼ入りで、数百万円…!!料理に気軽に使えないわ…!という戯言はさておき、真相は、女性の至高のもてなしと見るのが自然でしょうね。
しかし数百万円…(まだ言ってる)。
乙幡啓子
1970 年群馬生まれ・東京在住。「デイリーポータルZ」「フィギュア王」等の媒体で工作記事などを連載するほか、モノ作りイベントやワークショップ、講演などでも活動。
著書に「妄想工作」「乙幡脳大博覧会」「笑う、消しゴムはんこ。」。 また妄想工作所名義で「ほっケース」「スペース・バッグ」「ケルベコス」などの雑貨製作・企画も行う。
乙幡啓子オフィシャルサイト 妄想工作所
ヘルシーで様々な効能を持ったオイルへの注目が高まっています。中でもオリーブオイルの消費量は大きく伸び、同時に、ココナッツオイル、アルガンオイル、亜麻仁油、MCTオイルなど、なじみのなかった様々なオイルも注目されるようになってきました。
しかし、私たち日本人の日常的な食卓では、その活躍の幅はまだまだ狭く、真新しいノートのように真っ白な状態ではないでしょうか。 Olivenoteでは、読者の皆様の意見やオリーブノートアンバサダーへの参加を募りながら、カラダに美味しいオイルを中心に、楽しく健康的な食卓を築いて行ける情報を綴ってゆきます。