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食事がただの消費や道楽になりつつあるこの時代。そんな今だからこそ、敢えて“生産者の想い”を直接取材して、消費者に伝えようというこの企画。第3回目は埼玉県鴻巣市でパン屋“Bakery Palm(ベーカリーパーム)”を営む桧山さんご夫妻にお話をうかがいました。
編集部:ベーカリーパームさんは「安心安全で、しかも美味しいパン屋さん」とご紹介いただいて参りました。無農薬全粒粉から作るパンをはじめ、素材にこだわったパンが人気だと伺っております。
桧山佑一さん(以下、佑一):ありがとうございます。全粒粉のパンは粉になる前の玄麦(げんばく)を、無農薬栽培の農家さんから直接仕入れています。それを当店で石臼挽きして粉にしているので、風味が良いとご好評をいただいております。
編集部:全粒粉は、小麦粉とどう違うのでしょうか?
佑一:小麦の表皮と胚芽を取り除かず、そのまま殻まで粉砕したのが全粒粉です。全粒粉は、小麦粉と比べて栄養価が高いです。薄力粉と比較すると、3倍程度の食物繊維や鉄分を含みます。
当店ではもともと、いろいろなパンに少しだけ全粒粉を混ぜ込んで生地を作っていました。全粒粉を少し入れることで、コクが出て美味しくなるからです。そこで「せっかく玄麦を仕入れているのだから、全粒粉のパンも出来たらいいな」と考えて開発しました。
桧山美香さん(以下、美香):販売しはじめると一般のお客様にも好評ですが、糖尿病のお客様がわざわざこのパンを求めて買いに来てくださるようになって驚きました。今では「全粒粉パンは、この町に必要なパンだな」と、その意義を実感しているところです。
編集部:なるほど。健康と美味しさの両方を兼ね備えるパンは、社会的に作る意義がある商品なのですね。粉の他にも、素材にこだわりをお持ちですか?
佑一:パン生地で言うと、砂糖は一般的なグラニュー糖ではなく、てんさい糖を使用しています。一般的なグラニュー糖より血糖値が上がりにくいので、糖尿病のお客様でも比較的安心してお召し上がりいただけます。卵も市内の養鶏場と契約して、新鮮で美味しい卵を使用しています。
酵母は、そのパンに求める味わいや食感によって変えています。一般的なイースト菌で作るパンだけでなく、自然界から採取した酵母で作られた「ホシノ天然酵母」も使っています。イースト菌を使うと、フワフワ食感のパンが出来上がります。ホシノ天然酵母を使うと、発酵が緩やかなので比較的どっしりとしたハードなパンに仕上がります。どちらもそれぞれの美味しさがあるので、当店では使い分けています。
また最近では、1年以上かけて開発した「酒粕酵母」を使って醗酵させたパンも販売を開始しました。
パンに使う具材にもこだわっています。サンドイッチの中身は全て当店で手づくりしていますし、クリームパンに入れるカスタードクリームも一から手づくりしています。ここまでパンの具材を手づくりしているパン屋さんは、なかなかないと思いますよ(笑)
編集部:すごいこだわりですね!
編集部:原料費もかかるでしょうし、手間も相当なものだと思います。どうしてそんな苦労をしてまで、素材にこだわるようになったのでしょうか。
佑一:やっぱり、素材にこだわったパンが美味しいからです。
私は小さい頃からパン屋さんになるのが夢でした。ですから進学先もパンの専門に進み、とあるパン屋さんで何年も修行してこのお店を開きました。私が修行したパン屋さんはとても美味しいパン屋さんでしたが、自然派ではありませんでした。ですから私も最初は自然素材にこだわらず、師匠から受け継いだパンを販売していました。
しかし、自分のお店を出すことをきっかけに、勉強のためにいろいろなお店のパンを食べ歩くようになったのです。そうしたら、今まで食べたことがなかった新しい美味しさに出会うようになりました。ホシノ天然酵母もそうした食べ歩きの中で出会って、その美味しさに感動して取り入れることに決めたのです。
美香:夫は美味しさ重視ですから。パンの価値基準を「美味しいか、美味しくないか」に置いています。でも私は少し違います。常にレジに立ってお客様と接している私にとって、一番大切なのは「お客様のニーズ」です。
編集部:一緒にお店を切り盛りされていますが、ご夫婦で価値基準が少し違うのですか?
美香:そうなんです(笑)お客様に「このパンは何を使っているの?」と、直接聞かれるのは主に私です。ですから胸を張って「このパンはこんなに安全な素材で作られているから、安心してお召し上がりいただけます」と答えたいじゃないですか。ですから、当店の方向性を考えるときに、私は何よりお客様のニーズを重視しています。
佑一:しかも私たち夫婦だけではなく、実はもう一人、私の母も開店当初から手伝ってくれていまして……。
美香:夫のお母様は長年、自然派保育園で給食の仕事をしていたので、「安心・安全」を最重要視しています。ですから「無農薬」「天然酵母」「無添加」「手づくり」、こうしたキーワードは夫のお母様が持ち込んでくれた価値基準です。
編集部:となると、ベーカリーパームさんは「美味しさ」「お客様のニーズ」「安心安全」を重視した3人が一緒に経営している状態なのですね。
佑一:まさにそういうことになります。3人がそれぞれの価値観でパンのことを考えていますから、時には意見がぶつかることもあります。
例えば私の母が「安心安全の観点からいくと、このパンは違うのではないか」と考えたとすると、私は「いや、このパンは美味しいから残したい」と思って意見がぶつかるわけです。天然素材の酵母だけでパンを作ると、ハード系に片寄ってしまいます。でも美味しさには色々なバリエーションがありますから、私としてはフワフワしたパンの美味しさも残したい。
美香:かといって、夫も安心安全をないがしろにしているわけではありません。例えば夫が「このパンは十分美味しい」と思っていても、私は「糖尿病のお客様にとっては今の砂糖よりてんさい糖の方が体にやさしいから替えたい」と考えたら、きちんと替えてくれましたから。
佑一:はい。病気を抱えて、うちのパンを信頼してくださるお客様を裏切るわけにはいきませんからね。そうやって3人がそれぞれの価値観で考え、話し合って、全員が納得できる「想いが重なる点」を模索しながらここまで来ました。
美香:3人が議論を深めて、今のようなバリエーション豊かなラインナップになったわけです。
実際に、全粒粉100%のパン「カンパーニュ」の作り方を取材させていただきました。
玄麦を石臼で挽くところからこだわって作られたパンには、オリーブの風味を生かすために伝統的な石臼で絞ったオリーブオイルを合わせたいものです。
栽培から収穫、搾油まで全てを農園内で行う「シングルエステート方式」で作られたオリーブオイルなら、香りを損なわずに新鮮なままパンに合わせられます。
【特徴】
120年以上続く名門オリーブオイル農家のルイーザさんが、有機無農薬のシングルエステート方式にこだわって作ったエキストラバージンオリーブオイル。農園内で収穫したその日に、新鮮なまま石臼で果実をペースト状にして搾油しています。全ての工程を目の行き届く農園内で行うため、“身分証明書のあるオイル”と言われるルイーザ。お店で具材を全て手作りするベーカリーパームのパンと、相性抜群です。
ルイーザに塩やスパイスを混ぜます。そこにちぎったカンパーニュを浸して食べると、全粒粉の香ばしい香りとルイーザの青臭い爽やかな香りが華やかにマッチします。
【取材協力】
名称:Bakery Palm(ベーカリーパーム)”
住所:埼玉県鴻巣市神明1-7-1
電話:048-595-0150
営業時間:10:00~19:00
定休日:水曜日・日曜日
HP:https://palmpalm.crayonsite.net/
有機エキストラバージンオリーブオイル ルイーザ(LUISA)
有機栽培オリーブ果実100%のエキストラバージンオリーブオイル
ヘルシーで様々な効能を持ったオイルへの注目が高まっています。中でもオリーブオイルの消費量は大きく伸び、同時に、ココナッツオイル、アルガンオイル、亜麻仁油、MCTオイルなど、なじみのなかった様々なオイルも注目されるようになってきました。
しかし、私たち日本人の日常的な食卓では、その活躍の幅はまだまだ狭く、真新しいノートのように真っ白な状態ではないでしょうか。 Olivenoteでは、読者の皆様の意見やオリーブノートアンバサダーへの参加を募りながら、カラダに美味しいオイルを中心に、楽しく健康的な食卓を築いて行ける情報を綴ってゆきます。