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2020年4月23日

かどや豆腐店・行田在来の青大豆でつくる三代目豆腐、おいしさの理由

食事がただの消費や道楽になりつつあるこの時代。そんな今だからこそ敢えて“生産者の想い”を直接取材して、消費者に伝えようというこの企画。第2回目は埼玉県行田市で豆腐屋を営む三代目のご主人、かどや豆腐店の長島さんにお話をうかがいました。

運命の出会い ~行田の地豆腐「三代目豆腐」誕生秘話~

編集部:かどや豆腐店さんでは、江戸時代から栽培されていた「行田在来青大豆」を復活させて、この土地ならではの地豆腐を作っているとうかがいました。

長島寛さん(以下、長島):うちで作っている「三代目豆腐」のことですね。

編集部:はい。その三代目豆腐で使われている行田在来青大豆とは、どういう物なのですか。

長島:江戸時代の頃から地元の農家が栽培していた、在来種の大豆です。実は在来種の大豆というのは日本各地にたくさんありまして、埼玉県だけでも35種類もあることがわかっています。行田の在来青大豆は「実の付く位置が低くて、収穫が大変」などのさまざまな理由で、市場には出回っていませんでした。

ところが十年くらい前に、埼玉県農林総合研究センターが県内にある在来大豆の調査を行ったところ、行田の在来青大豆はたんぱく質が豊富で、豆腐作りに適していることが分かったのです。そこで市の職員が行田在来青大豆を持って、うちに説明に来てくださいました。昔は行田市にも15件程の豆腐店がありましたが、その頃には市内の豆腐屋は数件にまで減っていました。

枝豆にして食べてみると、ほんのり甘くて非常に美味しかったので「行田の豆腐屋として、この大豆を絶やしてはいけない」と感じました。実はその頃、ちょうど私がかどや豆腐店で三代目として働き始めて間もない時期でした。「スーパーに負けずに生き残る為に、何か違いがわかる豆腐を作らないと」と悩んでいた時期でもあったので、運命の出会いだと思いました。

行田在来青大豆の三代目豆腐

編集部:なるほど。長島さんがかどや豆腐店の三代目だから、「三代目豆腐」というネーミングにされたのですね。

長島:はい。かどや豆腐店は60年以上前に私の祖父が興したお店で、私が三代目になります。と言っても、私はもともと豆腐屋を継ぐつもりは全くありませんでした。

編集部:そうなのですか!?

長島:実は私、以前は不動産関連の会社で営業職に就いていました。お客様のニーズに合わせて物件を紹介したり、売り主さんと買い主さんの条件を調整して、双方に納得していただくために知恵を絞る毎日でした。充実していましたし、営業成績もまずまずで順調だったのですが、なぜか突然内臓の疾患で吐血しまして(笑)

体調を崩したことをきっかけに、実家の豆腐屋を継ぐ覚悟を決めました。亡くなった祖父に呼ばれている気がしたというか、そういう巡り合せだったのでしょうね。営業を経験したからこそ、その頃にはものづくりの仕事に惹かれる気持ちを持つようにもなっていました。

編集部:“豆腐作りに惹かれた”という、その魅力とはなんだったのでしょうか。

長島:やっぱり「正直に仕事ができる」というところではないでしょうか。どうしても営業職には駆け引きとか、タイミングとか、そういう難しさがありますよね。豆腐作りはもっとシンプルで、「良い物を作れば売れるはずだ」と納得ができました。

一方で、営業職を経験したからこそ「スーパーがやらないことをやらないと」という危機感も抱いていました。ですから、地元産の歴史ある青大豆を使って豆腐を作る事には大きな可能性を感じましたし、美味しい豆腐にする為に研究の日々でした。

かどや豆腐店三代目ご主人の長島寛さん

編集部:美味しい豆腐にする為のポイントは何だったのでしょうか。

長島:舌触りです。行田在来青大豆は、しっかりした味の美味しい豆です。そこに私が出来るのは、豆腐専門店としての技術力を駆使して、滑らかな舌触りを実現することだと思いました。

二代目である父は、輸入大豆を使ってすまし粉で固めた、ごく一般的な作り方の豆腐を作っていました。すまし粉を使えば比較的簡単に固まりますし、輸入大豆は味が淡白ですからそれで問題ありません。

しかし私が新たに作るのは他でもない、地元の在来青大豆を使った豆腐です。この貴重な大豆の特徴である甘みを引き立てて、絶妙な舌触りを実現するためには、にがりだけで固める寄せ豆腐にしようと考えました。

これまでと違う作り方を採用しましたから、父とはケンカばかりの毎日でした。父は温度を測ったり、にがりの量を測ったりはしません。職人としての感覚や、経験を重視するタイプでした。でも、国産大豆を使ってにがりだけで豆腐を固めるとなると、そうはいきません。私としても、父のやり方をそのまま受け入れるわけにはいきませんでした。

編集部:にがりだけで豆腐を固めるのは、そんなに難しいのですか。

長島:はい。そもそも豆腐は作るのが難しく、抑えるべき条件(ポイント)がいくつもあります。その条件を1つでも逃すと、豆腐の出来はよくありません。工場で一般的な豆腐を大量生産する場合でも、気候が変わっただけで全然固まらず、大量に破棄が出ることもあるそうです。

そして特に、にがりだけで豆腐を固めるのは一発勝負で、その一瞬で全てが決まります。ごまかしが利かないため、温度管理や力加減などが非常に繊細な作業になります。豆腐専門店でも、作れないお店がたくさんあるほどです。そんな中で「作れます」というだけでなく、“最高の舌触り”を実現するためのベストマッチを、私は今でも手探りで探し続けています。

今後の問題は、どうにか私が行田在来青大豆を使っての豆腐作りの技術を確立しても、その技術を後進にどう伝えていけばよいのかという事です。豆腐作りは相当な意地と根気が必要ですから(笑)

繊細な温度管理が決め手! 三代目豆腐の作り方

実際に、行田在来青大豆を使った三代目豆腐の作り方を取材させていただきました。

1. 前日から、行田在来青大豆を水に浸しておきます。気温や湿度を踏まえて、水に浸す時間を調整することがポイントです。

青大豆という割に意外と白い

2.臼で挽いて、ドロドロの呉(ご)と呼ばれる状態にします。多すぎず少なすぎない、適量の水で豆を挽かなければなりません。

機械の中に石臼がある

3, 適温で煮ます。少しの温度の違いで食感が変ってしまうので、温度管理は絶対的に必要です。 

ホースで水をかけながら温度管理

4. 専用の機械を使って、豆乳とおからに分けます。行田在来青大豆を美味しい豆腐にする為にわざわざ購入した、高価な機械を使用します。

左が豆乳、右がおから

5. 型に流し込んで、適温になるまで冷まします。ここでも温度管理がポイントなので、必ず温度計ではかります。

適度にかき混ぜながら冷ます

6. にがりを入れて、撹拌します。入れるにがりの量、撹拌する回数、力加減、熟成させる時間……すべてが揃わないと美味しい豆腐になりません。
一番の腕の見せどころ

7. 30分ほど待てば、三代目豆腐の完成です。オタマですくって容器に盛ります。
ぷるんぷるんで美味しそう!

三代目が生んだ地豆腐には、四代目農家が生んだ革命のオリーブオイルを

「冷奴で食べることが多い夏場と、湯豆腐にすることが多い冬場では、微妙に硬さや舌触りを変えている」というほどこだわり抜いて作られた三代目豆腐。Olivenoteとしては、そんな特別な一品には特別なこだわりで作られたオイルを合わせたいところです。

三代目豆腐とのベストマッチ

LUISA(ルイーザ)

  • 原産国:南イタリア
  • タイプ:有機エキストラバージンオリーブオイル、味はミディアムとフルボディーの中間
  • おすすめ料理:肉料理や野菜料理の仕上げに回しかけて
  • 価格:1980円(税込)/190g
【特徴】

120年以上続く名門オリーブオイル農家の4代目であるルイーザさんが、自身の代で有機無農薬製法に切り替えた革命のオリーブオイル。先代までのやり方から有機栽培に切り替えた直後は苦労の連続でしたが、3年かけて有機栽培の土壌を作り上げたそう。ルイーザのコンセプトは“他にはない、美味しくてからだが喜ぶオリーブオイル”。3代目豆腐と、4代目のルイーザ。ともに「他にない、特別な商品を」という若い情熱でものづくりに挑み、作り上げた傑作です。

おすすめレシピ:冷奴のオリーブオイルがけ

輸入大豆で作った一般的な豆腐に比べて、行田在来青大豆は糖質が高くて甘味があります。是非醤油ではなく、塩とエキストラバージンオリーブオイルでさっぱりと食べていただきたいです。ルイーザは新鮮なオリーブオイル特有のピリッとした辛みがありますから、薬味がなくても塩だけで美味しくいただけます。

オイルの紹介(PR)

ルイーザ(LUISA)

有機エキストラバージンオリーブオイル ルイーザ(LUISA)

有機栽培オリーブ果実100%のエキストラバージンオリーブオイル

南イタリア・プーリア州の単一農園で、100%有機オリーブ果実を使用して栽培から搾油まで一括管理して作られたオリーブオイル。 搾りたての有機エキストラバージンオリーブオイルです。
企画:オリーブノート編集部
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