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2017年11月7日

日本人はオリーブオイル向き / 鈴木俊久さん 第3回インタビュー

鈴木俊久さん インタビュー vol.3

鈴木俊久さん 一般社団法人日本オリーブオイルテイスター協会 顧問

オリーブオイルの素朴な疑問を、日本のオリーブオイル業界の第一人者である鈴木俊久さんにどんどん質問させていただくこの企画。

第3回目の今回は、「日本人とオリーブオイルの関係性」についてです。地中海地域のオイルが、なぜ日本人にここまで受け入れられたのでしょうか。日本人とオリーブオイルの運命的な縁とは!? 


オリーブオイルの味の違いはどこから?

前回のお話しの中で、オリーブオイルにはそれぞれ味の違いがあって、慣れてくるとワインのように自分の好きな味ができてくるとおっしゃっていました。それぞれのオリーブオイルの味の違いは、どこから生まれるのでしょうか?

鈴木: 産地によってももちろん味の傾向がありますが、オリーブオイルの味を決めるのは主に「実の品質」「熟度」です。

―実の品質と熟度ですか。実の品質というは、具体的にどういうところを見て決定するのでしょうか?

鈴木: 「健康で、ちゃんと育ったオリーブの果実を使う」ということです。虫が食っていたり、傷がついていたりしてはいけません。果物のジュースと同じですよ。元の実がちゃんとしていないと、味の良いオリーブオイルはできません。

第1回目のインタビューでもお伝えしましたが、オリーブオイルは絞るだけで製品になる非常に珍しいオイルです。それはつまり、手直しがきかないということでもあります。ワインみたいに発酵させたり、寝かせて熟成させるという工程がありません。新鮮なことに価値がある商品なんです。ですから、オリーブオイルにビンテージはありませんよね。ただその年の気候によって、「当たり年」「はずれ年」のようなものはやっぱりありますけどね。結局原料となるオリーブの実の品質で、最終的にオイルの味が全て決まってしまうんです。

新鮮なフレッシュジュースのようなオリーブオイル

-そうすると、化学肥料を使っていないというのもセールスポイントになるのでしょうか?

鈴木: それはまた、ちょっと難しいところがあるんです。果実ですから、逆に化学肥料を全く使わないと虫が来てしまいます。適切な時期に適切な量を使うこと自体は、オリーブオイルの品質を保つためには決して悪いことではないです。

オーガニックにこだわると、かえって良い物ができなくなるリスクの方が大きくなってしまいます野菜はオーガニックで多少虫に食われていても安全の証だと考えられますけど、オリーブオイルでは実の出来栄えが非常に重要なので、オーガニックが良いということでは全然ないんです。

ですから「良い果実」と言うのがオリーブオイルの品質を上げる大前提となりますし、あとは熟度がどれくらいかというところですよね。

-熟度というと、完熟を使った方が美味しいとか、そういうことですか?

鈴木: 逆ですね。ここでいう熟度とはまだ実が緑色で若いうちに絞ったオイルなのか、かなり熟した物を搾ったものかの違いですが、今の価値観としては若くて青いうちに絞った方が価値は上がります。

若くて青い実を早摘みしたものが高価

オリーブオイルは早摘みの方が価値がある

-若い実から絞ったオイルの価値の方が上なのですか?果実は熟している方が美味しいというイメージがありますが。

鈴木: そうですね。普通の果実は糖度が基準になりますから。オリーブの場合は、糖度に当たるのが油分です。実が紫から真っ黒になるまで熟してから収穫して絞れば、たくさんの油を搾り出すことができます。反対に緑色の若い実からは、あまり油の量がとれません。生産効率を考えたら、実が熟してからたくさん搾り出した方が楽ですよね。

しかし、オリーブオイルの価値は「香り」なんです。

早い話が、青みかんを思い出していただければいいと思います。青いみかんの頃って、すごく香りが良いですよね。皮をむいたときに、バーッと立ち上がってくるあの香り。口に入れると酸っぱくて食べられたものではなくても、若い果実は香りが立ちます。あれはビタミンCの抗酸化成分によるものです。

オリーブも全く同じで、果実が若いうちは身を守らないといけないから、素晴らしい香りを放つ抗酸化成分がいっぱい出るんです。ですから今のオリーブオイルの流れは、油分を犠牲にしてでも香りをとる、ということになっています。

-1個のオリーブの実から取れるオイルというのは、早摘みと完熟でそんなに違うものなのですか?

鈴木: 熟度は大きいですよ。同じ品種の実から作っても、熟度が違うと同じ実とは思えないオイルができあがりますから。価格も全く変わってしまいます。早摘みでは高価だったオリーブオイルが、熟してしまうと大幅に価格が落ちるんです。

熟したオリーブの実

昔は人の手でやるしかありませんでしたから、早摘みのオリーブオイルを作りたくてもそう簡単にはできませんでした。ところがここ10~20年で、オリーブオイルを搾る機械がものすごく進歩してきたので、結構若い実でも機械で搾れるようになってきたんです。昔はメンテナンスが大変なプレス機を使っていたのですが、今はもう遠心分離機であっという間に分けてしまいます。そこが早摘みオリーブオイルが増えて来たことに影響しているかな、と思います。

石臼による搾油

オリーブオイルは日本人に向いている

-熟度による味の違いのお話を伺っていて思ったのですが、日本人は味覚が鋭いとよく言われますよね。それって、オリーブオイルの熟度などの微妙な味の違いも理解しやすいということはないでしょうか?

鈴木: あると思います。日本人は間違いなく味覚が鋭いです。向こうの人みたいにダイレクトに塩を振りかけるだけの味つけとは違って、日本人は間接的に塩味をつけたりしますよね。非常にマイルドな味が日本人に馴染んでいますから、オリーブオイルによるわずかな変化やオイルそのものの味の違いなんかも感じ取れるんでしょうね。

-ここ10~20年程度で突然日本人にオリーブオイルが浸透していった理由の一つに、日本人の味覚の繊細さが関係しているかもしれませんね。

鈴木: そうですね。それに日本人はここ10~20年くらいで、圧倒的にグルメ化してきていますよね。昔はどの家庭も、お醤油なんてスーパーでズラリと並んでいる有名メーカーの特選醤油で十分でした。それがここ10年程でどんどん「いい物が欲しい」というニーズが生まれてきて、スーパーにもさまざまな価格帯の醤油が売られるようになりました。

お味噌だって昔は「メジャーブランドのところであればいいや」という感じでしたが、近年は「無添加」や「生味噌」などのこだわりを持つ主婦が増えているそうです。

そうやって味に興味を持つようになると、どんどん味を理解できるようになっていきますからね。お醤油ひとつとっても、「保存の仕方によって香りの立ち方が全然違うわ」という繊細な味の違いを日本人はわかるようになってきたと思うんです。

もちろん、いまだにそういうのに全く関心が無い人もいると思いますよ。でもやっぱり、そういう味に対して意識が高い人が増えてきているというのは間違いないんじゃないかと思います。

-私たち日本人はオリーブオイルの歴史は浅いですが、日本人の調理方法や味覚というのは世界の中でもオリーブオイルをとてもうまく使える民族かもしれませんよ、と言ってもいいのでしょうか?

鈴木: そうだと思います。もともと地中海沿岸というのは魚介類をたくさん食べている地域ですから、日本の食材と同じようなものですよね。タコに醤油をかけるのか、タコにオリーブオイルをかけるのかの違いなだけですから。 日本人がオリーブオイルに親しみを持つのは、必然と言えるのかもしれません。

-そう考えると、オリーブオイルに運命的なものを感じますね。

鈴木: そうですね。オイルの他にも、日本でオリーブが美しく利用されているのをご存知ですか?

-オリーブオイルの他に、ですか?

鈴木: はい。実はオリーブの木自体が、非常に美しいんです。ですからスペインの樹齢何百年も経っているようなオリーブの木を日本に輸入して、結婚式場でシンボルツリーとして植えられたりしています。オリーブの木って、500年くらい経つとものすごく造形が複雑で彫刻のような美しさを持つんですよ。イタリアやスペインでは樹齢2000年を超えるような古いオリーブの木がざらにあるんですが、幹が複雑に絡み合ってどれも芸術的な美しさです。

-そうなんですか!見た目が美しくて、オリーブの爽やかな香りが漂ってきたら、さぞ素敵でしょうね。

鈴木: いやいや。オリーブの実そのものは何も香りがしないんですよ。

-え? オリーブの木では、オリーブオイルの香りがしないんですか?

鈴木: オリーブの実は、そのままでは全く匂いがありません。すり潰して特定の酵素が働き出すことによって、あの独特の青臭い香りが出るんです。その酵素の主体となっているのが「リポキシゲナーゼ」というもので、大豆の青臭い香りの素と実は一緒なんですよ。もちろんオリーブと大豆では「リポキシゲナーゼ」の種類が少し違いますが、香りを作るおおもとのメカニズムは同じといえます。

大豆の香りの素とオリーブオイルの香りは一緒

-だからオリーブオイルは日本人の味覚に合うのかもしれませんね。

鈴木: そうですね。オリーブオイルが持つ青臭さのようなものを日本人が平気で受け入れられるのは、もしかしたら大豆に親しんでいる食文化だからかもしれません。そう考えると、余計に日本人とオリーブオイルには運命的な縁を感じますね(笑)


3回に渡ってお送りしてきた国際オリーブオイル協会カンパニーパネルの鈴木俊久さんのインタビュー、いかがでしたか。恥を忍んで正直に告白しますと、筆者はそれまでオリーブオイルといえば「チキンソテーやパスタなどの洋食を作るときに少し使う程度で、なかなか減らない油」「付き合い方がいまいちよく分からない油」という印象でした。それがどうでしょう。オリーブオイルってこんなに何にでも使えて、日本人が心から美味しいと思える運命的な油だったとは!今まで勿体ない使い方をしていたと、心底思い知りました。

取材の日から筆者も、いろいろな食べ物にオリーブオイルを少量かけてみるようになりました。ヨーグルトもお刺身もアボカドの味噌漬け(※筆者の好物)も、どれも驚くほど味に深みが増して高級感が漂うではありませんか!

アボカドの味噌漬け

今後はさまざまなオリーブオイルに挑戦しながら、開封から1か月以内の美味しい時期に使い切れるように有効活用していこうと心に誓ったのでした。


鈴木俊久さん
オリーブオイルテイスティング・パネルスーパーバイザー。2002年11月に、日本ではじめて国際オリーブオイル協会(International Olive Council:IOC)からオリーブ・オイル・テイスティング・パネルのカンパニーパネルとして認定を受けた、日本を代表する業界のスペシャリスト。一般社団法人日本オリーブオイルテイスター協会 顧問。

企画:オリーブノート編集部
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